アップサイクル材開発ストーリー

広島の地域資源活用・課題解決のための新素材『牡蠣殻混練樹脂』

近年、SDGsやカーボンニュートラルの推進などにより、持続可能なものづくりが求められています。当社では金属から樹脂への置き換えを通じて、軽量化による燃費向上など環境負荷低減に向けた取り組みを進めてきました。開発する上で大切にしたかったことは、「当社が本社を置く広島ならではの材料で、かつ環境貢献につながる素材を作りたい」という思いでした。開発テーマを模索している段階で、広島の特産品である牡蠣の殻の堆積量が年々増え、保管場所が不足しているという課題を知り、牡蠣殻をアップサイクルできないかと考えました。そして牡蠣殻で循環型事業の構築に取り組んでいる丸栄(広島市中区)にお声がけさせていただき、牡蠣殻を活用した樹脂材料の開発を2019年からスタートさせました。

樹脂に牡蠣殻を混ぜ込むことで、殻の粒感を生かした独特の意匠性を表現することができます。一方で粒が大きすぎると自動車部品としての規格を満たせなくなります。丸栄に粒の大きさを揃えてもらっていますが、牡蠣殻は自然由来なので全く同じものは1つとしてなく、粒度の調整は非常に繊細な作業になります。牡蠣殻を均等に樹脂に混ぜ込むための条件出しや加工性の検証を粘り強く行い、牡蠣殻独特の意匠性を持ち、部品としての規格も満たしたものを開発することができました。




表面の白い点が牡蠣殻
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牡蠣殻混練樹脂は環境負荷低減の観点からも価値があると考えています。牡蠣殻を使用することで、広島の地域資源を活用しながら保管場所不足という課題の解決にも貢献できることはもちろん、石油由来の樹脂の使用量を削減でき、牡蠣殻自体がCO₂を吸収する〝カーボンネガティブ〟な素材である点も特徴です。また牡蠣殻を練り込むことで唯一無二のデザインにできるため、塗装レスを実現しさらなる環境負荷の低減・コスト削減につなげられることも強みです。

現在は製品化に向けた提案活動を積極的に進めており、自動車部品に限らず、住宅部品など異業種にも提案を広げています。また環境への配慮から、牡蠣殻の含有量をさらに増やしたいと考えており、どの程度まで可能か研究中です。混ぜ込み技術や意匠性の確保など、乗り越えるべき技術的な課題はありますが、引き続き研究開発に取り組んでいきます。 
今後は〝目の前の課題を多角的に捉え、柔軟な対策を講じられる研究者〟が自身の目指す姿だと考えているので、そこに向かって世の中のニーズをカタチにできるよう、研さんを積み重ねてステップアップしていきたいと思います。


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